30代以上の約80％が罹患しているとも言われていて、もはや国民病とも言える歯周病。
歯周病は歯を失ういちばんの原因であるとともに、さまざまな疾患や全身状態に悪影響を及ぼすおそれがあります。手遅れになってしまうと、時間もお金もそれだけかかってしまうものです。正しく身につけた毎日のセルフケアと歯科での予防処置を継続することで、歯周病のリスクや進行は大きく変わります。生涯を通じて健康でいるために今日から予防を始めましょう。
歯周病治療って？
歯周組織検査
- 口腔内写真
- エックス線写真
- 歯周ポケットの深さ測定
- 出血の有無
- 排膿の有無
- 動揺度の測定
「歯周病の進行」と「歯周ポケットの深さの目安」
健康
3mm以内
軽度
3〜4mm
中等度
5〜6mm
重度
7mm以上
処置（歯周病の状態にあった治療をしていきます）
①スケーリング
歯ぐきの上の歯に付着した歯石（細菌）を取り除きます。
②SRP
①で改善が見られない場合は歯ぐきより下の深い部分の歯石を取り除きます。そのため、表面麻酔します。
③歯周外科
①と②で改善が見られない場合は、外科的な治療を行う必要があります。
＋
口腔内清掃指導（TBI）
- PMTC
- 歯ブラシの指導
歯周外科治療（フラップ手術）を受けられる方へ
歯周病が軽度である場合は、手術をしない非外科処置でプラークと歯石を除去していきます。
しかし、歯周病が進行して顎の骨が奥深くまで溶かされてくると、歯周ポケット内に治療機器が届かないケースが出てきます。この場合、奥深くに溜まったプラークや歯石を除去するためには歯根面を露出させる必要があり、そのために行うのが歯周外科治療（フラップ手術）です。
歯周病が進行してしまった部位の歯ぐきを切開し、歯根面に付着しているプラーク（歯垢）や歯石を直視下で除去します。
- 麻酔をして、治療する部分の歯ぐきを切開します。手術は約1時間かかります。
- 歯ぐきを開き、歯根を露出させます。
- プラークや歯石を徹底的に取り除き、歯根の表面をキレイに清掃します。骨を削合して形を整える場合もあります。
- 歯ぐきを戻し、傷口を縫います。1〜2週間は創部はブラッシングせず、うがい薬でうがいをします。
- 1〜3日後に創部の確認と消毒を行います。
- 1週間〜10日後に糸を取ります。数週間で綺麗な歯ぐきになります。軟毛ブラシでのブラッシングを開始します。
- 手術後、1〜3ヶ月後に歯周検査をします。補てつ処置をする場合は治療後に行います。
フラップ手術の最大のメリットは、歯ぐきを切開することで歯周病の原因菌のすみかであるプラークや歯石を目視で確認しながら確実に除去できることです。
- 術後1週間は腫れがでる可能性があります。
- 重症化した歯周病の場合、改善せず抜歯に至る場合もあります。
- 骨を再生させる薬を併用する場合もあります。（保険内、保険外）
- 術後、良い状態を維持するためには患者さんご自身による徹底的なブラッシングが大前提です。
歯だけじゃない！歯周病と全身疾患の怖い関係
歯周病で細菌や炎症物質が全身に回ったり、しっかりものが噛めなくなったりすることで、さまざまな臓器に問題が起こる可能性があります。
全身疾患・状態にかかわる歯周病のリスク
- 認知症
- 脳血管疾患
- 低栄養
- 誤嚥性肺炎
- 心臓疾患
- 糖尿病
- 菌血症
- 慢性腎臓病
- 早産・低体重児出産
50歳になってから後悔しないために
ある調査では、「40代のうちからメンテナンスしておくべきだった体の部位」の第1位に歯のことがあがったそうです。40歳以降で歯を失ういちばんの原因は歯周病。
おいしく食べる、楽しくしゃべる、豊かな表情など、QOL（生活の質）の維持に歯を残すことは欠かせません。
歯周病治療で重要な「SPT」って何？
SPT（サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー）とは、歯周治療後再評価の結果、病状安定と判定された場合に、病状の安定を維持するための歯科医療従事者によるプラークコントロール、スケーリング、ルートプレーニング、咬合調整などの治療を主体とした定期的な治療です。
歯周病予防のためには「セルフ」＆「プロフェッショナル」のWケア
車の清掃や簡単なチェックは自分でしても、定期点検は必ずプロに頼むはずです。口のなかも同じで、毎日磨いても歯と歯の間や奥歯の奥の面、歯並びの悪いところに歯垢や歯石がたまったり、ステインが歯の表面にこびりついたりと自分でケアできない部分が出てきます。安全に乗るために車を整備・点検するように、歯科医院での定期的なケアで健康を手に入れましょう。